日韓トンネルという幻想と悪夢

日韓トンネル構想という物がある。その名の通り、日本と韓国を結ぶトンネルを掘ろうという計画である。海外ではイギリスとフランスを結ぶトンネルが存在して利用されている実績があるし、技術的にも不可能ではない。
問題はそのメリットとデメリットである。

何より、日本と韓国の間は地震の発生地である点が問題である。韓国には地震がないという幻想がまかり通っているが、歴史的には大地震はいくつも起きている。その中でも最大の物では、朝鮮半島東沿岸を震源として、半島全土で被害が起きた物が記録されている。
プレートの沈み込みの方向が日本から朝鮮半島方向に向かっているのだから当然である。
また、イギリスとフランスを結ぶユーロトンネルは金融の中心であるシティ地区と他のEU圏を結ぶ重要な意味を持つ。物資や人間の行き来も多く、元より航空・船舶の交通量は多かった。また両者は同じプレート上に存在し、地震の心配も無い。
しかし、それでも工事段階で多大な負債が発生して(工費は見積もりの6倍になった)破産保護状態となり、資金を出していた金融機関はこの大事業を継続させるために資金の回収を断念しなければならなかった。

イギリスとフランスという大市場かつ経済競合しない国同士が結ばれても、ユーロトンネルは費用対効果において不安定だったのである。
これに対し、ほぼ同種の経済で構成されていて(日本は韓国に比べて内需の割合が高いが、工業国である点では同じ)経済競合が生じている国家が結ばれたとして、ユーロトンネル以上のメリットはあるだろうか。
まして、空路も海路も一時期は利用が多かったが減少傾向が続いている両国を結ぶトンネルを作ったとして採算が取れる可能性はかなり低い。

長期的に見れば島国である日本と大陸を結ぶルートが作られることは大きな価値を持つが、現在ではこのトンネルの行き着く先は38度線で終点である。
また韓国では国内の南北輸送でストが発生した過去もある。ストは韓国では当たり前のように行われており、ある大手の会社では年に13回のストが記録されている。トンネルの管理や運用に支障を来すことは間違いない。
朝鮮半島が平和的に統一されたとして、その先に待つのは中国とロシアである。ここでもまたトラブルが予想される。特に中国では線路の維持に非常な不安がある。中国では金属の盗難は日常的に行われているし、国際路線は民族紛争の格好の標的である。

卑近なレベルでは、安価な移動手段が出来ることによる犯罪者の流入が予想される。日本における外国人犯罪では中国とブラジルと朝鮮・韓国がトップ3を独占している。北朝鮮からの覚醒剤の密輸に使われることはほぼ確実である。
犯罪者が逃亡にトンネル(移動手段が自動車になるか鉄道になるかは別として)を利用した場合、その逃亡を防ぐためにトンネルの移動規制が敷かれることもあるだろう。これを解除させるためにトンネル内でトレインジャックが生じる危険も高い。安心して使える輸送手段ではない。
韓国で地下鉄に放火し、多くの犠牲者を出した事件も思い出される。

トンネルの構想では壱岐諸島対馬が本土に繋がることになっているのだが、日韓トンネル構想で唯一の明るい部分がこれである。
日本と韓国の間では大量に集積させてから輸送される物資は少ない。小麦や米や大豆や原油や鉄鉱石は両国間ではほとんどやりとりされていない。国家間貿易より企業間取引が多いと言えるだろう。
観光など人間の交流も不安定で、物資の移動も経済発展によって組み立て工場としての価値を失いある韓国との間に、膨大な予算が必要なトンネルを造る意味はない。

同じトンネルを掘るのであれば、地震の危険性が同じであると仮定しても北海道・サハリン・ロシア本土を経由した方が良い。
既にロシアには西ヨーロッパまで続く鉄道が存在している。さらに冬季には海路が使用困難になるため通年的な物流の確保という点でも意味はある。
ロシアの治安や政治的な安定、市場は中国と比べて安心できるという物でもないが、少なくともロシア国内に限定すれば中国より安定している。つまり日本〜ロシア〜ヨーロッパの流通には格段の問題はない。
日本としては戦前の構想のように朝鮮半島〜中国〜ベトナム〜マレーシア・タイ〜シンガポールという東南アジアとの物流を密にできるルートも必要ではあるが、現段階では朝鮮半島と中国がブレーキとなる。

ロシアの現在と将来も明るいとは言えないが、逆にトンネルが結ばれることによってロシアにヨーロッパから極東までの国際物流という責を担わせることによって圧力をかけられる。
ロシア国内・国外の安定を維持できないのであれば国際物流を空路海路に戻すという脅しに使えるのである。ロシアはそれなりに外交は心得ているのである程度の対応は期待できる。
これを韓国、北朝鮮、中国に期待できるかだが、結論から言えば期待できない。政府が国民を統制出来なさすぎだからである。韓国では暴力的デモ、北朝鮮は国際外交の不安定要因、中国では国内で暴動が年1万件。

日韓トンネルはその接続先である朝鮮半島がブレーキとなり、さらにその先に結ばれる中国がさらなるブレーキとなっている。
将来的に先が見えないどころか、トラブルと厄災の原因となることが予想できる日韓トンネルより日露トンネルの方が確実であると言えるだろう。