死刑廃止を推進する議員連盟参加者だった千葉法相が死刑執行命令書に

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100728-OYT1T00441.htm


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 死刑執行は昨年7月28日に3人が執行されて以来1年ぶりで、「死刑廃止を推進する議員連盟」のメンバーだった千葉法相が昨年9月に就任してからは初めて。この日の執行により、死刑確定者は109人から107人になった。

 千葉法相は午前11時から東京・霞が関法務省で記者会見し、刑の執行に立ち会ったことを明らかにした。また、今後、東京拘置所の刑場を報道陣に公開する方針を示した。
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死刑制度自体が無くなるのが望ましいとまで発言した政治屋、命令書にサインまでしましたよ。ちなみに議員連盟参加者「だった」のは先の参院選で落選したので議員ではなくなったから、ではありません。大臣就任後に問題になったからです(2009年9月に脱退)。
基本的に、命令書にサインされてから実際の執行までは最長5日(土日などは含まず)らしいので、サインしたのは先週中から昨日までということになる。しかし、執行に立ち会ったからにはスケジュール調整もしなければならなかったわけで、昨日ということは考えにくい。つまりは先週サインしたのだろう。
重要なのはタイミングだ。

  1. 最高裁判決で国外退去を命じらた姉妹に対して、在留特別許可を認めた。(2009年)
  2. 参院選で落選した。
  3. 金賢姫元死刑囚の入国を許可した。
  4. 問責決議案が取り上げられそうになっている。
  5. 死刑執行。
こうやって見ると、死刑執行は単なる「問責決議の対策として『自身の主義・主張を押し殺してでも、職務は全うしている』と言うための手段」とも思える。あるいは単に「これまでさんざん法律を無視した」ことが知られて参院選に影響した、と思ったのかも知れない。
ちょっと考えてみよう。問責決議が提出されたら、政権はどうするか。
民主党としては、特に重い役職にあるわけでもなく、選挙で落選した議員である法相の去就と、ねじれ国会(しかも今回は無限ループ仕様)の解消とを秤にかければ、自ずと答えは見えてくるだろう。しかも、続投指示は現内閣が行ったとは言え、指名したのは前内閣だと責任をなすりつけることも出来る
国民新党はどうかと言えば、先の議員連盟の会長は国民新党亀井静香氏。しかも参院選では国民からNoを叩き付けられている。ここで「国民の信を蔑ろにする姿勢」を見せられるだろうか?
つまり、問責決議案が提出された場合、これまでの前例とは異なった様相となる可能性が高いのである。
各議員はどうか?
各議員の対応が最も意味をなすのかも知れない。問責決議を否決する理由として「死刑執行の実績」を錦の御旗とできるからだ。
党が決議拘束を行えば、政権の支持率が落ちるのは間違いない。となると、政権としては議員の自主的な判断と責任を丸投げにしてしまう方が都合がよい。そうなるとメディアは否決票を投じた議員に理由を問う。その時に各議員はこう言えばいいのだ「法相は主義主張を押し殺して職務を全うしたし、連盟からも脱退した。何か問題はあるか?」と。

上記は一種のシミュレーションであり、予想だ。だが、この予想が実際の物となった場合、私たちが考えなければならないのは「政権は死刑執行という、人命を国が奪う行為を、自らの保身と延命のために利用した」となることだ。
死刑制度自体には異論はない。だが、それが政権の、あるいは特定勢力の利益のために使われることがあってはならない。それは政権や勢力や主義主張以前の、人間としての資質に関わることだ。

問責決議はどうなるのだろうか。その対応は、そこで交わされる言葉は。
一言でも法相擁護の弁として「死刑執行の実績」が取り上げられたなら、それを発した人間の名を私たちは絶対に覚えておかなければならないだろう。