いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌

這いよれ!ニャル子さん』がTVアニメ化されるそうで…。

ラノベは色々と読んでいて、その中に『ニャル子さん』があったわけですが、この小説はTVアニメ化できないだろうなぁ、と思っていただけにちょっとショック。
「這い寄る混沌」で分かるように、内容はクトゥルー神話を元にしています。ですがラヴコメです。正確に言うと「ラヴクラフト・コメディー」です。
クトゥルー神話のネタが分からないと、当然内容もわかりません。BLTサンドの中身がビヤーキー・ロイガー・ツァトゥグァ、なんてボケの意味が分かる人はどの程度いるのでしょう。

なんて問題の前に、『ニャル子さん』にはもう一つ問題があるのです。内容が、セリフが、ボケが、ツッコミが、パロディで構成されていることです。
しかもその頻度がものすごく高い。パロディを除外すると、本の厚さが変わるくらいの頻度。
基本はアニメ(幅広い)と特撮(平成ライダーがメイン)とゲーム(主にRPG)ですが、一体どの程度の人間が元ネタがわかるのか、というものも含まれます。次はその例。
『さしものエースアタカも空母が撃沈されてはバンゲリング帝国に勝てるはずがなかった。』。バンゲリング帝国というキーワードがないと元ネタの同定すら無理かと。他にも「半キャラずらし」というワードで示唆されているゲームが出たりしますが、これは有名所なのでかなりわかりやすい方。
元ネタを扱ったWikiがあるので『ニャル子さん 元ネタ』で検索していただければその頻度とか内容はわかっていただけるでしょう。

他にも問題は山積み。(主として特撮の)歌詞の一部が脈絡があったりなかったりで使われてるので権利関係とか絡むだろうし。引用が短いからセーフなのかもしれませんが、もしすべての権利関係をクリアしてアニメ化するのであれば、そのための労力は米ドラマ『コールド・ケース』をDVD化するのと同じくらいのものになるのではないかと。
まあ他にも地上波では湯気やピー音が大活躍したりする内容もあるのですが、それはまあ他と比べれば些細なこと。

ストーリーとかキャラとかは良いのでアニメ化は喜ばしいことだし、放送されたら確実に見るわけですが、ここまでマニアックかつ受け手側に知識を要求するものを一般向けとして扱うのは相当難しいことだと思われます。原作レイプなんて事態にならなければいいのですが…。
まあ既にグッズ化されてたりするので視聴者はそこそこ獲得できるのではないかと。

ただ、DVD特典で「全元ネタ解説」なんかついたら、しかも映像とか元ネタの曲とかがフルでついたりしてたらマニアにとってはものすごい訴求力になることも事実。RPG系ゲームのセリフが大量に登場するのですが、それらもカバーしてたりすると、とんでもなくマニア向けアイテムになること確実。そしてDVD特典が本編より長くなるでしょう。うん、そこまでやってくれたら間違いなく買う。
特典映像でマンガ(主にジョジョ)をどうするかという問題はあるのですが。

クトゥルー神話とアニメと特撮とゲームの知識に自信がある人は注目だ!とも言えますが。
逆にこの作品をきっかけにそっちの世界にハマる人も出ることでしょう。口にするのもはばかられる奈落への道。名状しがたい求道への転落。ちょっとくすぐったいですよ。なに、痛みは一瞬です。