イカの集魚灯

gooのブログ通信簿で「漁業を目指せ」という結果が出ました。
http://blogreport.labs.goo.ne.jp/tushinbo.rb

イカ釣り漁で使用されるメタルハライド灯用発電のために燃料が消費されるとして、イカ釣り漁が停止状態になったというのを聞いた方は多いでしょう。
イワシやサバでは漁獲高が見込めないという理由で停止状態になったことがあるが、今回の事態は単純ではない。政府に対して補助金を要請するデモンストレーションの意味もあるからです。
そもそも農家には様々な助成金が出ていて、いくつかの条件を満たすと農産成果物より多額の金が手に入ると言う。
ならば漁業就労者に助成金が出てもおかしくない。食料の調達は国家の維持に必須であり、働かない農家に与えるより漁業就労者に与えた方が良い。

農家に対してバラマキ助成制度を打ち出した民主党は何故かこの件には動きがない。

さて、イカ釣りの集魚灯が電力を消費する、とニュースで何度も聞いて、おや?と思った方も多いのではないだろうか。白熱灯は変換効率が悪いから省エネのためにLED灯に替えよう、という動きがある。ニュースではなぜ、LEDに替えようという話が出ないのだろう?
と言うのも、実際にLEDで代用する実験は各地で実施されているからです。
海の中では青色ダイオードで発光する辺りの色が最も深くまで届きます。ホタルイカなど深海の発光生物がほとんど青い色を放つのはこれが理由なのでしょう。実際、イカの目で最もよく見える色はやはり青色付近。種類によって異なりますが、青から水色あたりの波長に集中しています。
ちなみにホタルイカには寄生虫がいるので、よくTVでやってる躍り食いは本来厳禁です。皮膚の内側を寄生虫がはい回ったり強烈な腹痛や嘔吐に襲われたりします。『美味しんぼ』では普通に生食していましたが…。まあ、あの漫画は乳児に「蜂蜜(ボツリヌス菌)と卵(アレルゲン)」をセットで与えたトンデモ漫画ですが。さらにその話を単行本から削除しているとか…。
韓国にはタコの躍り食いがありますが、調べてもタコの寄生虫に関する文献が見つからないので、もしかしたらタコは大丈夫なのかもしれません。でも、自重した方が賢明でしょう。韓国では毎年「虫下し」を飲むのが普通と聞きますし。

話を戻すと、メタルハライド灯は白色光を出しているので海深くまで届くのは、発光している色の中の一部だけで残りは無駄。
無駄だけならともかく、紫外線領域も発しているので健康被害も報告されています。
さらに言えば、光の90%は無駄に放出されています。50%は海とは無関係な方向に行き、20%は甲板で反射し、20%は海に入るものの船から離れすぎるので漁獲に貢献していない。
無駄なエネルギー投資に健康被害。こうなると、変換効率が良くて発光方向が決まっていて必要な領域の色を放出して健康被害もないLEDに着目しないはずがない。LEDの長寿命も後押しします。
この、光に方向性があるというのはよく天文の世界で言われる「光害(ひかりがい:命名時はこうがい)」も抑制します。「光害」は街の灯りなどが無意味に放たれるせいで星がよく見えない、といった不満から作られた言葉のようです。知る限りでは30年以上前から使われています。
無駄に光が放たれているのは宇宙からも観測されます。衛星からの写真で、日本海が輝いている物を観たことがある人もいるかと思われます。あれは海に入っていかない光が膨大な量になっていることを示す写真なのです。

LED集魚灯開発事業検討会等の資料を見ると、現状ではLEDのみでの漁獲は燃料費と漁獲高の兼ね合いを考慮するとメタルハライド灯に及ばないようです。
LEDはちょっと工夫すれば海中に入れてしまうことも可能です。これだと海面に反射して無駄になる光も削減できます。
問題は海中に入れるにせよ他の場所に設置するにせよ、設備費用のようです。
試算では3年程度でランニングコストの削減により設備費は回収され、以降は経営改善に貢献するとされているようですが、現状喘いでいる漁業就労者や船主に、サイズにもよりますが一隻一千万にもなる出費は無理と言えるでしょう。
イカが今後3年間現状のまま獲れ続くという保証はありませんから、3年程度で投資費用が回収できるとは限りません。

さて、LEDを集魚灯に利用する、と考えた時にもう一つ思いついたことがあります。スピード社水着騒動で話題になった山本化学工業の「バイオラバースイム」は使えないものか、と。「バイオラバー」ではなくね。この二つの違いは…とても怪しいです。
この素材は水との摩擦をほとんどゼロと言って良いレベルにまで落とします。船に貼ったらどうなのだろうか?まあ摩擦以外の抗力はあるわけで、これを貼っただけで物凄い燃費向上に繋がるとは思えませんが。
それに強度の問題やフジツボなどの定着への耐性とかクリアしなければならない課題はあるでしょう。
他にも自動車の電化が進んでいるように、漁船もキャパシタを積むとか太陽電池を搭載するとか海水を利用する燃料電池を積むとかといった方向も模索されるでしょう。
従来は無かった、使えなかった素材や部品を使うのは漁業ではかなり進んでいます。網や網上げ機や魚群探知機やGPS、その他にも対象魚を狙うための機材導入は「他に代用手段がないから」とはいえかなりのもの。
ところが、船体そのものはあまり進歩していないというのが実情のようです。特に形状やエンジンはそれほど進歩していません。
エンジンに関しては、現状ではディーゼルエンジン以外の選択肢はないと見られています。ガソリンエンジンを使用するとガソリンの保管という問題にぶつかります。燃費についてもディーゼルの方が優れています。
個人的にはスターリングエンジンがもしかしたら…とも思うのですが、おそらく電化の方が進むのでしょう。
だとすると、より省電力化と効率化が必要になるだろうと思われます。